アキュセラショック 新薬の開発失敗
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バイオベンチャー、創薬ベンチャー銘柄には、株価が何倍にもなる楽しみもあるが、逆に株価が何分の1にもなるリスクもある。
というのもバイオベンチャーというのは、そもそも万年赤字のことが多くて、決算発表のたびに株価が大きく下がる。
新薬を一つ開発するためには、20億円くらいかかってしまうので、毎年毎年20億円以上の赤字が出る。
そのため、毎年毎年、ベンチャーキャピタルや証券会社に新株を第三者割当で発行して増資し、研究開発のための資金を集め続ける。
ベンチャーキャピタルや証券会社は、新株予約権を少しずつ権利行使し、株式市場で売りさばいて資金を回収する。
そのため第三者割当増資があるたびに株価の上値が抑えられて、なかなか株価が上がらないこともよくある。
それでも創薬ベンチャー、バイオベンチャーの株が買われるのは、開発中のパイプライン・新薬候補が、市場に出回って巨大な利益を上げる可能性があるからだ。
そうなると株価は10倍や20倍に跳ね上がることも少なくない。
逆に言うと、主力のパイプライン(新薬候補)の新薬開発が頓挫して失敗してしまうと、数十億円の開発資金がぶっ飛び、倒産の危機に見舞われかねない。
そうなると株価は10分の1以下になり、低位株・ボロ株扱いされる事も多い。
たとえば2016年5月末に起こった「アキュセラ・ショック」は、ヒドかった。
最終段階まで進んでいた新薬の臨床試験結果が芳しくなく、6日連続ストップ安を記録し、株価も7分の1になるまで売り込まれた。
アキュセラショック 新薬の開発失敗
バイオベンチャー銘柄は、新薬開発がうまく行くと、株価が10倍20倍にもなるが、逆に失敗すると株価が暴落して、数分の1になる事が多い。
たとえば2016年5月末に、アキュセラ・インク(4589)は、新薬の臨床試験の結果が悪かったせいで、なんと6営業日連続ストップ安になり、株価もピークの7,000円台から、1,000円割れまで売り込まれた。
アキュセラ・インクは、ドライ型加齢黄斑変性症に効く飲み薬の「エミクススタト塩酸塩」の開発を進めていた。
飲み薬で目が治るというのは、実は夢のような話で、アキュセラは果敢にもそれに挑戦していた。
そこで臨床試験が進むにつれて、株価は4,000円台まで上昇し、臨床試験が終了したという報告以降、買いが集まって7,000円台まで急騰した。
ところが「効果が確認できなかった」という発表が出た。
さらにこの新薬の開発パートナーだった大塚製薬との契約も終了と発表されて、投げ売り状態になってしまったわけだ。
アキュセラ・インクの株価 日足チャート
アキュセラの場合、大株主のSBI証券が、保有株を増やしていたことが分かって、それでようやく下げ止まった。
アキュセラの場合は、有力なパイプラインが他になく、一つの失敗が大きく響いた面もある。
しかしアキュセラの新薬開発失敗は、他のバイオベンチャー銘柄にも波及して、3月から続いていたバイオベンチャーブームは、一気に冷めることになってしまった。