踏み上げ相場は、なぜ起こる?
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踏み上げ相場とは、たまったカラ売りを踏み上げて上昇する相場のことだ。
カラ売りとは、株を借りて来て売り、後日それを買い戻す(買い埋めする)売買取引のことだが、貯まった売り玉を半強制的に買い戻させることで、株価が急騰する。
つまりカラ売りを踏み台にして株価がどんどん上がるので、踏み上げ相場という。
そして踏み上げ相場が起こる銘柄は、低位株に多い。
というのも低位株は株価が安いだけに、強い材料が出ると、一週間もあれば株価2倍になることもよくあるからだ。
株価が2倍になると、カラ売りの含み損は100%近くになってしまうため、カラ売りしているトレーダーは、慌てて買い埋めしたり、買い玉を建てて買いヘッジしたりする。
そのため、新規の買いにプラスして、買いが増えるので、株価が急上昇するわけだ。
そもそも、カラ売りというのは、そんなに儲かるものでは無い。
粉飾決算などの企業スキャンダルがあれば、株価は半分以下になるので、50%以上の利益がでることもあるが、たいていは20%~30%くらいしか利益にならない。
たとえ売り建てした企業が倒産して、株価が1円まで下がっても、利益は建玉の100%未満にしかならない。
しかしカラ売りの損失は、場合によっては100%を遙かに超えることもある。
というのもカラ売りした銘柄の株価が2倍になっただけで、100%含み損になってしまうからだ。
さらに株価が3倍になれば、200%の損失になってしまう。
そのため、カラ売りした銘柄が急騰すると、急いで買い埋めして損切りするか、買い玉をたくさん建てて両建てして、買いヘッジする。
そのせいで株価がさらに上がるのが、踏み上げ相場というわけだ。
逆日歩10倍適用で、株価が急騰
踏み上げ相場を加速させるのが、「品貸し料」という特別料金だ。
株を借りるときには、貸株料というのがかかるのだが、株不足が発生したときには、貸株にプレミアム料金が発生する。
それが品貸し料で、通称「逆日歩(ぎゃくひぶ)」だ。
カラ売りをする際に株を貸し出してくれるのが、日証金(日本証券金融)という金融会社なのだが、貸せる株がなくなると、貸し出した株全部に対して、逆日歩という「特別料金」を請求してくる。
「貸株不足になったので、今貸しだしている株を返してください。株を借り続けたい人は、特別料金を払ってください」というのが、逆日歩になる。
逆日歩は貸し出した株の株価によって上限が決まるのだが、貸株不足が深刻になると、上限が最大10倍まで引き上げられる。
まず「貸株注意喚起」が出れば、自動的に逆日歩の上限が2倍になる。
さらに「新規貸し出し停止」が出ても株不足が解消しない場合は、「逆日歩10倍適用」という臨時措置が発表されて、品貸し料の最高料率(上限)が、10倍まで引き上げられる。
逆日歩10倍適用というのは、普段は上限が1円の場合、最大10円まで引き上げるという措置で、これがキツい。
というのも200円台くらいの株価で、逆日歩10倍適用になって、満額の最高料率10円が適用されると、たった一晩で1株あたり10円も持って行かれてしまうからね。
さらに火曜日にカラ売りを買い埋めしなければ、最低3日分の品貸し料が付くので、一晩で最大30円がとんでいく。
なのでカラ売りの売り玉を持ち続けるには、同じ株数以上の買い玉を制度信用で買い建てて、逆日歩を払わないで済むようにする必要がある。
株価がさらに上がっても、売り玉と買い玉が同数なら、自分で払った逆日歩を、自分で受け取ることができるしね。
ところが実は、カラ売り専門トレーダーの多くは、なぜか両建てすることを拒んで、泣く泣く高い値段で株を買い戻す羽目になる。
このあたりは不思議なことなんだけど、カラ売り専門のトレーダーは自信家が多くて、失敗の対処が遅れてしまうらしい。